アニメ「ステラ女学院高等科C3部」を視聴した

animestore.docomo.ne.jp

ステラ女学院高等科C3部(しーきゅーぶ)(全13話)、視聴完了。

Twitterのフォロワーが「方向性の違い、ギスギスを描いている」と言っていて気になったので見た。

面白かった。interestingの方。

サバゲーを題材にした作品で、俺には全くその趣味は無かったのだが、大いに楽しめたし、何よりも大和ゆらという人間に惹かれた。

C3部の個性豊かで萌え萌えなキャラクター達ももちろん魅力的なのだが、やはり主人公である大和ゆらの物語としての側面が大きい。

(ちなみに初瀬カリラと陸奥ほのかが好き。金髪と眼鏡っ娘が好きだから)

3話の大会でゆらが自ら降参を宣言してしまった事、榛名凛の勝利至上主義の思想に触れた事から、それまでサバゲーを楽しんでいたゆらの言動は少しずつ変化していく。

それ以降のゆらの"強くなりたい"、"勝ちたい"という言動からは、自分のせいで負けてしまった事に対する自責の念が伺える。その真面目さ、責任感の強さが彼女の特徴の一つだ。ただ、1話冒頭でも描かれている通り、彼女は人見知りでもある。回想シーンでも中学で孤立している様子が描かれており、根が深い。

真面目さ故に熱心に行動するが、そこにはコミュニケーションが不足している。思い込みと自己判断で突っ走り、ますます周りが見えなくなる。ディスコミュニケーションをきっかけに、彼女は少しづつ周りとすれ違い、孤立していく。

6話はギャグ回かと思いきや、先述の中学時代の回想が挟まれたり、文化祭のゆら対そのらのシーンでは、そのらが子供の危険を防ごうとした隙を突いてゆらが勝利するという、後のゾンビ事件にも通じる"勝利への執着"が滲み出ているシーンもあり、ゆらを理解する上で重要な回となっている。

ゆらの変化は7話以降が激しいが、それ以前からも少しずつ描かれており、突然の豹変という訳ではない。

その、コミュニティが少しずつ崩壊していく様がリアルだ。"ディスコミュニケーションをきっかけに少しずつ上手く行かなくなっていく"事例を俺は何度か経験しており、俺自身が性格的にその原因になってしまった事もある。だから、ゆらのネガティブ思考で思い込みが強く周りが見えなくなるところ、団体戦なのに一人で何とかしようとするところに心当たりがありすぎて胃が痛かった。

7話でゆらを庇ったそのらが負傷、入院するという事件は、ゆらをますます追い詰める。勝手な大会へのエントリー、勝利への異常な執着、独りよがりな指導…と、ゆらの過剰な責任感が裏目に出てしまい彼女とC3部員の溝はより深まっていく。変わりたいと思っていたゆらが良かれと思って起こした行動が、また彼女を孤立させる結果になってしまった。皮肉。

そして大会決勝戦、ゆらはゾンビ行為を行い不正に優勝してしまうのだが、その後の彼女の行動からは、生き方に対する迷いが伺える。凛のように勝利至上主義に振り切っているのであれば、後日ゾンビ行為を自ら大会運営に報告するという事はしなかっただろう。しかし、ゾンビ行為に手を染めず真っ当に敗北する、という事ができるほど誠実にもなり切れなかった。そのらを怪我させてしまった事や、大会期間中C3部を主導してきた事に対する責任感の強さ故に後に引けない気持ちもあったのだろうと思う。

ほのかがゆらに「一人で抱え込まないで」と声をかけるシーンがあったが、そう言われても人見知りにはどうすればいいか分からない。人との接し方が分からないから、人に頼る方法が分からないし、自分一人で全てを解決しようとしてしまう。だから自分勝手な行動をとってしまう(自分では良かれと思っている)し、上手く行かないと自分を責める。そして更に抱え込んでしまう。

10話、ゆらが凛率いる明星女学園サバゲー部にて活動するのだが、その中で凛がゆらに対して放った言葉が心に刺さったので、書き起こしてしまった。

「あなたは、私やそのらに自分の理想を求めている。そして、勝利による称賛で、自分の存在を示そうとしている」

「それは、他人に自分の存在を押し付けているだけ」

「自己犠牲も同じ。全てあなたの自己満足」

「いいえ、違わないわ。一見人のために見える行動でも、あなたは常に見返りの称賛を求めている」

「結局、あなたは自分の事しか考えてないのよ」

核心を突いた台詞ではないだろうか。これが聞けただけでも、このアニメを見てよかったと思う。

真面目に、必死に励んできたゆらがこの仕打ちを受けるのは不憫だが、羨ましくもある。俺も十代の頃に同じ事で悩んでおきたかった。

居場所を失い途方に暮れるゆら。留学によってC3部を去ることになってしまったそのら。残されたC3部員が企画した「そのちゃんお別れサバゲー大会」に向かって、物語は収束していく。

11話はそれまでのわだかまりに対するアンサーが提示される非常に重要な回。C3部員は「ズレを見て見ぬ振りをしたのはダメだった」と省み、ゆらは丁次郎と再会し「自分を認め、人を認めろ」と助言を貰う。

そしてついにゆらがC3部に復帰、12話では盛大にサバゲー大会、最後に人見知りを克服したゆらが描かれる…という形で終わる。(13話については割愛)

 

視聴後に監督のインタビューを読んだが、これがかなり良かった。

web.archive.org

監督が大和ゆらという一人の人間を切実に描こうとしていたのが分かる。主人公がルーザーである、という点にも監督の想いがあり、それに心を打たれた。リアルでオルタナティブなアニメだ。このような作品が存在してくれている事が、本当に有難い。

『ステラ』を監督できて、本当に色々勉強になりました。客観的に観ても、こんなにガチで人見知りを描いたアニメはほかにないなと思います。その意味では、ひとつ「勝ったな」という気持ちはありますよ。

監督、あなたの勝ちです。

また、ネットを見るとゆらを非難する声が多いが、人見知りの俺としては悲しい気持ちになる。普通の人には共感されないのか…と。

ゆらを悪者にするのは一般論としては正しいだろう。ただ、ゆらのように人見知りだったり、生き方に悩んでいる人達、先述のインタビュー内の言葉で言うと"ルーザー"側の人も沢山いる。そんな人達にとっては、ゆらは自分を投影する鏡であり、社会で生きるためのヒントにもなり得る。少なくとも俺は、このアニメに出会えて良かったと思っている。

以上。

ステラ女学院高等科C3部、ありがとう。

group_inou「HAPPY」感想

Happy - EP

Happy - EP

music.apple.comgroup_inouの新作、「HAPPY」を聴いた。

個人的には"活動休止していたアーティストの復帰作"というと、目新しさもなく期待を超える事もなく老いだけを感じさせるような、「ああ、この人はもう俺の中で思い出になっちゃったんだな」と思わせるようなもの、という印象があった。「HAPPY」もソレなのではないかという不安があり(ハマっていただけにその不安はデカい!)、リリースからしばらくして、先ほど(2024年3月10日昼)意を決して自室のスピーカーの前に座って聴いた。

(ちなみにいつもは通勤中にイヤホンで音楽を聴いているため、この聴き方は気合いが入っている事の表れ)

 

聴いて、まず、不安は杞憂だったし、安心どころか期待を超えてきて感動した。

前作までの作風というか、ユニークさと切なさの絶妙なバランスという彼ららしさは保ちつつ、新しい表現方法も散りばめられており、れっきとした「group_inouの新譜」だった。

 

1.ON

「_」〜「DAY」あたりを思い出させるような音色と共に耳に入る「スイッチオン」の声。再生して初めて耳に入る言葉が「スイッチオン」という粋な計らい。OFFだったものがONに、0が1になる瞬間を迎えられること、こんなありがたいことって、なかなかないね

ELECTRIBE独特の音色に乗るcpの歌っているような歌っていないような声、これだよこれ!group_inouが帰ってきた

相変わらず情景が見えるような見えないような、カットアップ的な味わいもある絶妙な歌詞。

最近ラップを聴くようになったからか歌詞の押韻に対して敏感になったのだが、「バイブス」「怪物」、「栽培」「どうだい?」で韻を踏んでいるのが気持ち良い。以前inouにハマってた頃はそこまで韻に対して敏感ではなかったので、改めて過去作も聴き返してみたいな。

「畳まれた新聞紙 もう用が無いのかも」のセクションは流石のimai節というか、ブルーノートを織り交ぜたフレーズが特徴の、泣きのトラックが炸裂している。このトラックが一見意味不明なcpの歌詞にも説得力を与えている…というのがinouの魅力だと思っているが、この部分でも「俺ってもうこの新聞紙と同じかもしれんな…」と新聞紙に感情移入させられてしまった。もちろん彼らがそれを意図しているかは分からないが。

後半はCメロ→Dメロ→Eメロ、のように新しい展開を重ねながら盛り上がっていく。絶頂の後にそれを超える絶頂があるような、カタルシスの連続に度肝を抜かれた。

「大気圏 飛び越えてく 向上心」という歌詞もあってか、過去作の繰り返しではなく新しいものを見せつけていく、という彼らの気概さえ感じる。

「旺盛なビラ〜」という謎の歌詞と共に迎える泣きのフィナーレ。何故か泣ける。imaiのトラックのドラマチックさには本当に感服する。ニコニコ動画に「謎の感動」なんてタグがあったが、group_inouはその概念に限りなく近い(よく考えてみるとそこまで謎でもないが…)。

アウトロは「COMING OUT」のオマージュだろうか?頭の音が似ていたため、懐かしい気持ちになってしまった。考えすぎだろうか…。

 

2.HAPPY

トラックは「MAP」的なフワフワ感と「_」的な泣きのコードワークが特徴。

そしてcpの歌がいつにも増してメロディックに聞こえる。Aメロなんかはいつもならメロディを付けずにラップっぽく歌いそうなところだが、コードにうまいこと歌メロとしてハマっている。

また、サビではファルセットが印象的。inouの曲でここまでファルセットを強調したものは今まであっただろうか?あったらごめんなさい。

全体的に歌メロが美しいという、新しい路線のinouという印象を受けた。

だからと言ってThe歌モノという感じではなく、彼らが持つ独特のラフさも健在しており、ここまでの2曲が聴けただけでも彼らは現在進行形のアーティストなのだと思えた。

サビの「ハッピーな人はゆらりゆらり誰と踊る/ハッピーな人がゆらりゆらり君と踊る」の繰り返しが最後には「ハッピーな人が途切れて」に変化し、曲が終わりに向かっていくのが、ビターで切ない。

 

3.HAPPENING

昨年突然先行リリースされたシングル曲。

スケベめな歌詞の曲は以前もあったけど、これはまたちょっと違う表現をしてきたなと。「どシコい合戦」「土下座に 丸飲み」とか、インターネット感がある。でもcpってそういう文化に精通してるんだろうか…。わからん。俺の性癖が変なだけ?

全裸土下座 (ぜんらどげざ)とは【ピクシブ百科事典】

丸呑みフェティシズム - Wikipedia

あと「暴れん坊のコギャル猫」みたいなかけ離れた言葉の組み合わせとか「優れた欠点」みたいな逆の言葉の組み合わせってフックになっていいよね。

youtu.beAC部によるMV。縦長で延々とスクロールしていく漫画という斬新な作り。

楽曲とマッチしたシュールさと躍動感が素敵。

 

4.SKETCH

上物のフワフワ感が「MAP」っぽいし、記憶の中の風景に思いを馳せるような歌詞も同じく「MAP」、特に「VERANDA」「BLUE」「MANSION」あたりを思い出させる。

ただ、何と言ってもドラムにブレイクビーツを取り入れているのが新鮮。彼らのイビツさのバラエティが増えたという感じで、1ファンとして喜ばしい。この先もビレイクビーツやサンプラーを用いて曲を作るとしたら…と考えるととてもワクワクする。あとライブではどう再現するのか気になる。

終盤で「輪廻転生」というワードが出てくるが、「JUDGE」でも同じワードが出てくるあたりcpにとって何かのキーワードなんだろうか…。

 

5.FANTASY

冒頭のシンセのウニョウニョした音作りが新鮮。この曲は全体的に今風の音作りになっている気がする。

「校庭に浮かぶ 校舎はまるで〜」のセクションの不安定さが、他のセクションの長調感との対比を生み出していて見事。ここも半音階の使い方がimai節という感じ。

歌詞からは小学生の頃国語で習った「くじらぐも」を連想してしまった。というかその教科書に描いてあった挿絵。空にくじらって事で。

で、ノスタルジアや子供のイマジネーションがテーマかと思いきや「夢見る心は いつの間に」や「DNAは君の中」など、"大人から見た子供"的な視点も入っている。アーティストは年を重ねると親視点の歌詞を書いたりするが、そういう感じだろうか?cpの私生活についてはあまり存じ上げないので何とも言えないが…。

 

6.MESSAGE

前曲から一転、シリアスで暗めなイントロから始まる。以前の彼らの曲には無かったような温度感に少しびっくり。

そこに乗るcpの歌もラップのようなフロウで、これもまた新鮮。ラップ調の歌は以前もあったが、ここまでヒップホップに接近したフロウで歌っているのは初めてではないだろうか。「一糸まとわぬ姿に変形/"朝一" "オレンジ" おいしい味は"美味"/記憶に"霞" 心の"闇"/虹色 輝き "レインボー"/ロシアの前のソビエト"連邦"から続く/UVB-76 謎の短波放送」といった具合に韻を強調するような抑揚と間の使い方が非常にラップ的。

トラックの温度感も相まって、彼らの新境地という印象を受けた。group_inou、ここに到達したか…!と。ただ、言葉選びや合いの手のユーモアによって彼ららしさは保たれているという絶妙なバランス。

で、メロディックな歌に切り替わり、「猫撫で声のネズミでも/チャレンジしてみたいんです」と続く。「猫撫で声のネズミ」も先述したような逆の言葉の組み合わせだが、自己矛盾を抱えた存在、と捉えて感情移入してしまった。矛盾を抱えながらも挑戦したい、という意味のラインなんじゃないか…と考えて熱くなってしまったが、俺の勝手な解釈なので皆さんには無視していただきたい。

味噌田楽のくだりはシンプルに大好き。「この世で一番強い食べ物」ってどういう話題?ってツッコみたくなるし。このツッコミ不在な感じが彼らの魅力の一つだなと再認識。

その感じで散らかした言葉を回収するのが「MESSAGE」という曲名なんじゃないかと思う。「チャレンジしてみたいんです」も「味噌田楽だと思う」も「好きな気持ち」も「君は嘘を つかないでいいよ」も、一見バラバラのように見えて全部MESSAGE、伝えたい事なのではないかと。世間の一方では求められ、もう一方では拒絶されるメッセージ性というものに対する彼らの姿勢を、俺はこの曲に見た。とは言ってもこれも俺の勝手な解釈なので皆さんには無視していただきたい。

ただ、

「好きな気持ちを 歌にして返す」

「歌にしたいくらい素敵」

「恥ずかしそう お静かに/夢を語るね」

「君は嘘を つかないでいいよと/伝えて」

いずれも、言葉にして表現することについて説いているように思える。

シリアスなトラックに乗せてこれらのフレーズを投げかけられると、そう思わずにはいられなかった。

 

…以上。

随所に新たな試みがあったし、これからのgroup_inouが素直に楽しみ。

そして復活してくれてありがとう。本当に。心から。

久しぶりにinou聴いた上にメンバーの情報もしばらく入れてなかったので間違いがあったら申し訳ない。その際は指摘していただけると嬉しい。

ではまた。

20231022

‎評決のとき - SWANKY SWIPEの曲 - Apple Music
漢のDABOに対するDISの要因の一つに「ジャケットで銃を構えている」がある。

日本はアメリカのような銃社会ではないが裏社会はそうとは限らないし、ヒップホップシーンにはその特性上裏社会に近しい人も少なからずいる訳で…。

それをリアルに感じられるのがSWANKY SWIPE「評決のとき」だと思う。

事実を歌ったこのリリックからは、情景と共に渦巻く悲しみがひしひしと伝わってくる。

そしてラスト8小節に込められたメッセージがあまりにも切実かつ悲痛。

実際笑えねぇよgangsta movie

興味本位で暴走 ガキに舌打ち

死ぬ気で引き金引いたとしても 

引くに引けずに犯した罪だとしても

おじさん塀の中で何思う

憧れて持ち上げる奴らにも問う

ろくでもない自分自身にも問う

一瞬で全て変える弾丸を喰らう

銃を持つという事がどういう事か?ってのがここに詰まっていると思う。

これを踏まえると、アウトローな身分ではない自分でも、漢がDABOをDISった理由がより深く理解できる…気がする。

ヒップホップヘッズの中には音楽を通して裏社会に対する憧れを抱く人がいるが、決して生半可な気持ちで踏み入っていいものではなく、重大な責任と深い罪が伴う。それをBESは身をもって伝えてくれた。あまりにも痛ましい形で…。

20230919

昨日から精神状態が悪いんですよね。という訳で自分の心に何が起こってるのか整理してみましょうか…。原因は何だろうと考えてみます。

休日は仕事が無かったため抗鬱剤を飲まずに過ごした事、遅くまで酒を飲んだため睡眠の質が落ちた事…あたりでしょうか。

十分な睡眠が取れていない状態は本当に良くないですね。全部に対してキレたくなります。子供かよ…。Twitterとかやってると目に入ったもの全てに対して物申したくなってしまうんですよね。説き伏せたくなるんです。全員が敵に思えてくるんです。現に虚空に向かって威嚇するようなツイートを連投したり支離滅裂な発言を繰り返したりしてしまいまして…。Twitterやめたほうがいいですね。

そんな訳で一旦アカウント消しました。何度目だよって感じですがそうでもしないと頭を冷やせないので…。そんな後付けの理由を考えてみましたが実のところは今回も含めて毎回衝動的にアカウントを消してしまっています。

休日はライブ見たり飲みに行ったりとすげー楽しかったんですけどね〜…、なんでこうなったんだか…。

出来事としては、ひょんな事でフォロワーのフォロワーあたりの人たちの悪意のあるツイートが目に入って、さっき書いた通り精神状態が悪いのも相まってかなりキツい状態に。俺も悪意ツイートしてるので被害者ぶる訳にはいかないんですけどね、頭では分かってるんですけどね、筋は通したいものです…。というか俺に対しての発言じゃないんだからスルーしろよって自分にツッコみたくなりますが…。

最近ライブをしたり見に行くようになったりして、敵視しているバンドマンや音楽好きにも認知される可能性が高まってきたのと、ヒップホップみたいに曲でやりあう訳でもなくツイートでネチネチとディスってるような人達がすぐそこにいるのってのが分かってきて、ここに居るのやだな〜って思って消えた訳です。と言いつつも俺自身もその嫌な奴らの一員な訳で…。

そういうコントロールできない事で落ち込んでも仕方ないんですけどね。うまく生きたいですね…。

まあ落ち着いたらTwitterに戻ります。落ち着くぞ!

 

今日は仕事の後ガストに行きました。

クーポンで安くなってるので生ビールを2杯、フライドポテト、鶏肉などを入れました。

帰った後も冷奴とワンカップを入れました。

せめて平日ぐらいは酒はほどほどにしたいです。

あとNORIKIYO「雲と泥と手」を聴きました。精神状態が良くない時に聴くとハマりますね。

 

寝ます。

Null「青空」録音やミックスの話

ども…。この度、Null「青空」のレコーディング、ミキシング、マスタリングを担当させていただきました、坂口です。

一昨年フロントマンの五十嵐さんから依頼を受けまして、昨年2月から録音を進めていきました。場所は僕のバンドのレコーディングでもお世話になっているSTUDIO CRUSOEです。
録音が終わったのが7月なので、結構長期戦でしたね…。間が空いてたので実際に録音してた時間はそこまで長くはありませんが、楽器を変えて録り直したりその場で思いついたアイデアを色々試したりと手間をかけました。

曲ごとに話をしていきたいのですが、その前に各楽器の録音について全曲に共通している事をさらっと話していきます。

 

【ドラム】

ドラムセットはスタジオの物をお借りしました。ここのドラムセットの音、好きです。ビンテージらしいです。
ドラマーの福佳さんの好みを聞きながらチューニングやミュート等の音作りをしていきました。個人的にスネアやタムのピッチを曲で使われているスケール内の音に合わせると曲に馴染む感じがするので、そうしました。
マイキングに関しては基本的によく見る感じのアレなんですが、マイブームになっている手法があるのでそれを試しました。

床にギリギリ付かないぐらいの低さにマイクを立てて、その音に強めにコンプをかけて混ぜる、という手法です。
スティーブ・アルビニ氏が床にマイクを置いていたのに着想を得てこんなマイキングをしてみたのですが、コンプをガッツリ掛けたせいかデイヴ・フリッドマン的な効果になりました。コンプはスタジオの1176を使わせて頂いたのですが、実機は極端な設定にしても音が破綻しにくい感じがしますね。
あとは福佳さんの演奏頼りでした。

 

【ベース】

ベースは曲ごとに違う竿を使ってレコーディングしてます。どれも良い音でした。スタジオのDI、持ち込みのDI、アンプに立てたマイクの3回線で録音し、そのバランスで最終的な出音を作ってます。とは言っても楽器と演奏が良いのでこっちではほとんど何もする事がありませんでした。ありがたいですね。
ベースアンプはスタジオに置いてあるAmpeg B-15Nを使用。竿との相性も良く鬼に金棒という感じでした。マイクはD112をセレクト。ベースの音域を難なくカバーしてくれました。

リズム隊の録音の様子。

 

【ギター】

バッキングは五十嵐さんのジャガー、リードはでこさんのファイヤーバード(ノンリバ)と五十嵐さんのジャガーを曲に応じて使い分ける形で演奏されてました。ノンリバのファイヤーバードを初めて実際に見ました。格好良いギターでした。
アンプは主にツインリバーブを使用。
マイクはSM57とMD421という鉄板の組み合わせに加えてR121を使用。R121は初めて使わせていただいたのですが、主に低い帯域(弦の鳴りよりも下の、ピッキングした時にン゛ッってなってるとこ)をカバーできて、お二人の楽器との相性も良かったのではないかと思います。
DAW側ではギター1本につき3トラックになる訳ですが、それらのパンを微妙に変えて、音像が点ではなく面になるようにしました。でも基本的にはギター2本を左右に振るのはいつもの僕の手法と変わってません。この定位、ライブ感があって好きなんですよね。

ギター(五十嵐さんパート)録音の様子。
でこさんの写真がありませんでした、ゴメンナサイ…。

 

【ボーカル】

歌に関しては五十嵐さんのパフォーマンスの良さが全てでしたね。機材の話とかしなくてもいいぐらい…。
歌入れはボーカリストのコンディションに大きく左右されるものですが、今回は調子の良い時に録れて大変幸運でした。

そんな感じです。

 

それでは曲ごとの話をしていきます。

 

1. 青空

「青空」というタイトルでこのダークな曲調…。「僕は青空が大嫌いで♪」、こういう裏切り方、好きです〜。syrup16gの「夢」を連想させますね。
BPM自体は遅めなのですが、フレーズの組み方が倍テン的でなかなか一筋縄ではいかないノリの曲だと思います。
ドラムはパツパツバチバチ系を目指してミックスしました。自分の曲ではアンビエンスを思いっきり歪ませたりするのですが、このバンドでは汚すぎる音はあまり合わないかなと思ったので、刺々しさとクリアさの塩梅をシビアに調整しました。
ベースはプレべを使ってました。曲調に合ってて良かったです。五十嵐さんがバツヲさんに対してピッキングで歪ませてほしいという感じのリクエストをしていたのですが、バツヲさんの楽器でそれをするのはなかなかハードだった様子でした。録音後にバツヲさんのプレベを少し弾かせてもらったのですが、コンプで例えるとスレッショルドがめちゃくちゃ高いような感じで、めっっっちゃくちゃ強くピッキングしないとバキバキした音が出ないという恐ろしい楽器でしたね。まるで修行のような録音でしたが、苦労していただいた甲斐あって格好良い音が録れました。「先生!」の所のドカーン!って音とか、「愛情や♪」の所のドコバンバン!って音も暴力的に決まってて思わず現場で笑顔になりました。
ギターも両者とも派手にやってて、録っていても楽しかったです。イントロとかは音色から殺意を感じて非常に良かったですね。
2Aは元々ギターは入らない予定でしたが、バツヲさんの提案でエフェクトをかけたハーモニクスのフレーズが入り一気に幻想的な雰囲気になりました。ベースの音色との対比が緊張感を生んでいてゾクゾクしますね。
何と言ってもギターソロが強烈ですが、ディレイをかけてウェット音の定位を動かすのはバツヲさんのアイデアです。イングヴェイの何かの曲を参考として聴かせてくれた覚えがあります。何の曲でしたっけ?
アウトロはリードギターのフレーズが秀逸です。テンションノートとクラスタボイシング(コードの中で音をぶつけるやつ)を用いたフレーズで、曲のダークさを一層際立たせていました。録音中にこのフレーズが出てきた時はコントロールルームの中で皆で盛り上がった記憶があります。フレーズは良いけど何か物足りない感じがありましたがビッグマフを掛けてもらったら全てが解決しました。

 

2. しらふの夢


良い曲ですよねー!!個人的な好みで言えばこの曲が一番グッと来てます。
なんというか、切なさとか名残惜しさを感じる曲ですね。アニメのエンディング見てる時みたいな気持ちになります。
ミックスに関しては青空のようにグイグイ行く感じではなく一音一音を大事に聞かせる事を意識しました。マスタリングしてて気づいたんですが他の曲より歌が前に出てますね。
そんな感じでこの曲は個人的には歌に注力してました。サビがファルセットで入るんですが、録音時に僕から「そこもっと女々しく歌ってもらえませんか?」的な注文をしました。我ながら分かりにくい注文だなあと思いますが、デモを聴いた時からなんとなくイメージがあったので言ってみました。
この曲の主人公って、失ったり傷ついたりしながらも何か目指すものがあって孤独に歩んでると思うんですよ。なので弱い部分を見せるポイントがあると人間らしさが出るんじゃないかと思いまして…。そんな訳で「女々しく」なんて分かりにくい注文をしたのですが、五十嵐さんは難しいなあと言いながらも歌いこなしてくれました。ありがとうございました。
ちなみにサビのハモリのメロディーラインは僕が考えました✌︎
ドラムはイントロやAメロなどで普通にスネアを2拍4拍で叩かず変則的なリズムパターンで叩いてるのが面白いポイントですね。最後のサビやアウトロで満を持して(?)2拍4拍のフレーズになるのが気持ち良いです。最後のフィルインでリバーブがかかるのは福佳さんのアイデアです。(福佳さんはリバーブが好きみたいですね!)
ベースは何と言ってもソロが聴きどころですね。格好良く決めてくれました。拍手👏
その後のCメロの歌の裏でさりげなく5拍ずつのフレーズを入れてて恐ろしかったです。

3. 灰になる


syrup16g感のある曲ですね。
繊細なニュアンスを必要とする曲で、リズム隊、特にドラムの録音で試行錯誤した記憶があります。五十嵐さんが福佳さんにシンバルの叩き方を指南する場面もありました。Nullは五十嵐さんのビジョンがはっきりしてて、尚且つそれに応えられるメンバーが揃っているのが素晴らしい所だと思います。儚さを感じさせる演奏が曲にマッチしてて非常に良かったです。
ベースの音も凄く良かったです。この曲で使われてたジャズベの音が個人的に一番好きですね。ジャズベにしてはかなりどっしりとしたローが出ていて、尚且つ反応の良さや粒立ちの良さもあるという化け物みたいなベースでした。録音の際はドライな音の方が曲に合ってそうだったのでベースアンプの前に衝立を立てて録ってみました。メンバーからも好評で嬉しかったです。
リズムギターはジャキっとした音でリズムを作りながら引っ張っていくような感じです。ジャガーって独特な鳴り方しますね。曲のイメージに引っ張られてるかもしれませんが、コードストロークの音に儚さがある気がします。
リードギターでは開放弦を使ったアルペジオが多くて僕好みでした。
それとAメロでは弾いてるか弾いてないか分からないぐらいピアニッシモで弾いたフレーズが出てきたりして、こだわりを感じて好きでした。あとサビが3回あるんですが、それぞれフレーズを変えてるのがドラマチックで好きですね。3サビの後のフレーズもフィナーレ感があって格好良かったです。職人。
サビの前にフィードバックを入れるのは五十嵐さんの提案でした。良い感じのフィードバックがなかなか出なくて苦労した覚えがあります。
2サビの前の「お前のせいだ」も五十嵐さんのアイデアで、マイクから離れて歌った声を録りました。こういうハッとさせる演出があると締まりが出ていいですね。
3サビの後の合唱はNullの全員で歌ったものです。Nullは五十嵐さんがボーカル!ってイメージだったのでこの提案をいただいた時ちょっと驚きましたが、録ってみたらかなり良くて不覚にもウルッと来てしまいました。
ちなみにC414を2本立ててステレオで録ったものを2つ重ねてます。合唱を録ったのは初めてで手探りでしたがうまく行ってよかったです。
ミックスでは空間をどう作るかで結構迷いました。歌詞が具体的でパーソナルな内容なので、広がりを持たせるよりは部屋っぽい空間を認識させる方向で進める事にしました。
最後のサビは想いを馳せている部分なのでディレイを使ってそれまでよりも開けた感じを演出してみました。これも好評でよかったです。
そして「じゃあね」で終わるのがクールですね。空虚な現実に引き戻されるような締め方が見事です。

 

曲ごとの話は以上です。
Nullは前回の音源も僕が担当したのですが、その時よりも良い演奏をしてもらえたと思いますし、僕もより良い音で録れた気がします。自分もバンドも成長できたと実感してます。でもまだまだ行ける感じはあるので、これからも試行錯誤していきたいですねー。

そして来月9月9日はNull主催のライブがあります。僕が所属しているバンドEmpty Classroomも出演します。

https://twitter.com/_Null_0000/status/1672143592792662016?s=20

出演者にお声がけいただくか、会場にご連絡いただければ予約できます。よければ来てください〜。

ではまたお会いしましょう。Null「青空」をよろしくお願いします!

20230703

普段寝不足気味なのも原因だろうけど、先月から薬の副作用の眠気が酷くて、仕事から帰って夕飯食べた直後に限界が来て気を失ってるみたいな事が多かった。

改善策として、というか仕事中から眠気が酷かったので、タイムカードを切った後に職場で少し寝てから帰ったら、多少元気に活動できるようになった。

ただ、2時間ぐらい寝てしまったので、帰ってからはご飯食べてアニメ1話見るぐらいしかできなかった。難しい。

でも、好きな音楽を流しながらウトウトしてる時間は結構好きだった。職場でそういう事をする特別感も良かったし。これ続けてたら怒られそうだけど。

「STAGE」楽曲解説 作曲編

お世話になっております。坂口です。
「STAGE」楽曲解説、リファレンス編に引き続き、作曲編です。
リファレンス編との内容の重複が少しありますがご容赦ください。

 

チューニングはレギュラー、リズムギターのみ2カポ、ドラムは1タム1フロアです。

 

イントロ
まず強烈なイントロです。再生した瞬間に全てを破壊したいと思いまして…。何言ってんだこいつって感じですが作ってる時はそれぐらい熱くなってました…笑
例のごとくⅣ系の進行です。今まで作った曲であらゆるテンションノートを使い尽くしてしまったので、ここまで来たらもうテンション全部乗せにしようと思い、リズムギターはⅣのパワーコード+開放弦、その上でリードギターはⅤのコードを弾くという手段を取りました。
コード進行に関しては進行してる感(サブドミナントドミナント→トニックみたいなやつ)に意識が向くのが嫌だったのでベース音が半音下がるだけ(ディグリーネームで表すとⅣ→Ⅰ/Ⅲの繰り返し)にしてコード感にあまり変化が生まれないようにしてます。
そんな感じのコードワークとリファレンス編でも挙げたPattern Against Userみたいなドラムとノイジーなギタープレイを掛け合わせてこのイントロになりました。

 

A
イントロの進行を引き継ぎつつ一気に静かになります。こういう展開があると緊張感が出て引き付けられますね。ギター一本だけになるのは決別と孤独のメタファーです。嘘です。今思いつきで書きました。
その後ドラムと同時に歌が入ります。ここから徐々に熱が上がっていくようなイメージです。なんか変なベースも入りますね。

 

B
3拍子のパートです。
ここはワルツのイメージがあったんですが実際は全然そんな事無かったです。なんかガチャガチャうるさくて踊れませんね。
リズムギターは1〜3弦固定コードを、リードギターは4度堆積のアルペジオを弾いていて、コード進行は有りながらもコード感を曖昧にしています。
んで、その後また4拍子に戻る訳なんですが、その際にびっくり系ノイズを挟んでます。これはギターもベースもめちゃくちゃ歪ませた状態で開放弦をガーって鳴らした音です。うるさいですね。

 

2イントロ
繰り返しのため割愛します。

 

2A
ヒップホップを意識したドラムに乗せて隙間のあるアンサンブルを構築しました。作ってた時はスローテンポでタイトな16ビート=ヒップホップという雑な認識を持ってました。今聴くとむしろFUGAZIとかの方が近い気がしますね。何にせよ緊張感を出せたんじゃないかなと思います。

 

2B
繰り返しのため割愛します。

 

ブレイク
ベースだけになる部分です。
この後の展開に持って行く際に、流れを止めずに振れ幅の大きい静と動を表現したかったのでベースがルートを弾き続けるという形になりました。
ギターが掛け合いみたいになる所はイントロのフレーズをなぞってます。

 

サビ(?)
なんかギャーギャーうるさいところです。
演奏はイントロとほぼ変わりません。
歌については、当時は今の自分ができる一番極端な表現をしたいと思っていて、その結果叫ぶ事になりました。
初めてマイクに向かって怒鳴ったんですが、なんか恥ずかしかったです。
聞き返してるとなんかこいつ必死だな〜笑って気持ちになります。
でも当時の衝動とかエネルギーが凝縮されてて良かったんじゃないですかね。

 

アウトロ
進行はそのまま、リズムが変わります。
2Aの激しいバージョンみたいな構想で作ってました。キックの譜割とかベースのフレーズが所々共通してます。
こういう展開でハーフテンポになるのってカタルシスがありますよね。
でもノリをあんまり変えたくなかったのでシンバルを8分で刻むのは持続してます。
このガシャガシャ感がこの曲のキモでもありますしね。
ギターは熱くなって熱くなって熱くなってタガが外れちゃったみたいなイメージで弾いてます。
こういう演奏をする時でも計算してフレーズ(と言っても楽譜には起こせないようなものですが)を固めて録るところが良くも悪くも自分の個性かなと思います。

 

アウトロの後
僕はここを自由時間って呼んでます。
リファレンス編でも書きましたがcabsのライブで曲終わった後もドラムがドカドカ叩いてるのかっこいいな〜って思って真似しました。
他の楽器もドラムに合わせてるような合わせてないような感じでガーって弾いてて、滅茶苦茶な感じで終わりです。
ドラムが最後に叩いてるのはGRAPEVINE「ねずみ浄土」のフレーズつもりでしたが微妙に違いましたね。
ドラムだけ勝手に全然関係ない曲叩いたら面白くね?と思ってこの様になりました。
ライブ感というかそれぞれの演奏がぶつかり合ってる感じを出したかったんですが、いかがでしょうか。
…あ、ここまで書いたところで思い出したんですがアルバム版は音ぐちゃぐちゃにしてて訳分かんない感じにしてましたね。
完全に忘れてました。SoundCloud版の話をしちゃってました。
アルバム版はマスターにディレイかけて延々と轟音が鳴り続けるようにして、いきなり切って終わらせるようにしてます。
最後の最後でハッとさせるような仕掛けがあったらいいなと思ってこの終わり方にしました。
聴いた人にとって刺激になっていたら嬉しいです。

作曲編は以上です。
次は歌詞の解説になるかと思います。
以上です。ではまた。