「STA」セルフライナーノーツ

お世話になっております。坂口です。2月に「STA」というアルバムをリリースしました。皆さんお聴きいただけましたでしょうか?

「STA」ストリーミング/購入
「STA」歌詞カード

せっかくなので情報を残しておきたいのと、自分の曲について語りまくって気持ち良くなりたいので、こうしてセルフライナーノーツをしたためました。
なお、当記事の解説はあくまで正解という訳ではなく、所謂「公式が勝手に言ってるだけ」です。もし、お聴きいただいた方の解釈やイメージと違っても、それは間違いではありません。ご自身で感じたものを大切にしていただければと思います。インスパイア元のアニメや漫画などの話もしばしば出てきますが、それらの作品を知っている必要も全然ありませんし、そういったコンセプトの音楽でもありませんので、各々好きなように楽しんでいたければ幸いです。

解説は曲ごとに書いていきます。
なお、収録曲のうち「第12話」と「STAGE」は僕がVo/Gtを務めるバンドEmpty Classroomでも演奏していますが、今回はあくまで僕個人の曲としての解説ですので、ご承知おきください。

それでは。

1.電子の砂漠
アルバムの中では一番新しい曲です。
イントロ〜Aメロのコードストロークとメロディを最初に思いついて、そこから広げて作っていきました。
7拍子と4拍子を行き来したり転調したりと愉快な感じの曲ですね。それとコードの響きやフレーズに冷たさ(?)が出るように意識しました。歌モノのフォーマットに則りつつ掴みどころがない、親しみやすいようなそうでもないような曲になったんじゃないかなと個人的には思ってます。
ギターのフレーズはコード感重視でアルペジオ中心に作ってます。2番AメロではATDIを意識したりもしました。
あと2サビの後の展開はスピッツの「ワタリ」をイメージしてたんですが、寄せすぎました…苦笑。本人に怒られたら土下座しようと思います。
曲名は、最初にデモを作った時はなんとなくイメージで「砂漠」と名付けてたんですが、歌詞がインターネットにまつわる内省的なものになってしまい、「砂漠関係ないけどタイトルどうすっかな〜」という状況の時に、「初カキコ…ども…」(2chの有名なコピペネタ)の「かたや俺は電子の砂漠で死体を見て、呟くんすわ」の一節をふと思い出し、これピッタリじゃん!って事でタイトルに引用させていただく事になりました。
歌詞はなんというか、未明2冒涜編みたいな感じです。性的衝動と拒絶反応が同居している状態ですね。一語一語全部解説すると長くなってしまうので、耳馴染みのなさそうな言葉だけ、以下に補足しておきます。
・非公開でフォロー→pixivの機能です。「非公開でフォロー」したユーザーはプロフィールのフォロー欄に表示されません。
・34番目の法則→ルール34の事を指しています。ルール34とは、ありとあらゆるものにそのポルノが存在する、という旨のネットミームです。曲中では、「そのポルノが存在するは仕方がない事」と自分に言い聞かせる様子を描く目的で引用しています。
・鍵を開ける、磨りガラス→pixivFANBOXやFantiaの様子を表しています。その類のサービスに課金した事がある方はピンと来るのではないでしょうか。
歌詞には出てきませんが関連ワードとして「脳が破壊される」というネットスラングもありますね。詳しくはググっていただければ。
あと一時期話題になったこの記事この記事もテーマが近いかもしれません(あくまでテーマであって僕の思想とは別ですが)。

2.落花
アルバムの中では一番古い曲です。2020年の夏あたりにデモを作った記憶があります。当初のタイトルは「花」でした。
現在の制作体制(ドラムはマルチマイクでセルフレコーディング、ギターとベースは宅録した後スタジオでリアンプ)になってから初めて公開した曲でもあります。
曲が出来た経緯ですが、The CardigansのCarnivalをコピーしていたらイントロのコードワークを思いついて、そこから広げていったらGRAPEVINEみたいになっちゃった感じです。
GRAPEVINEの曲だと「エレウテリア」「13/0.9」「アナザーワールド」あたりを意識しました。あとセツナブルースターの「なないろ」も頭の片隅にありましたね。
アレンジに関してはコード進行を軸に進めていきました。Bメロの半音クリシェからサビに繋がっていく展開とか結構気に入ってます。
自分にしては捻ったコード進行のバッキングを先に作ってしまったので、歌メロやギターのフレーズを乗せるのに苦労した覚えがありますね。
歌詞は「勇者であるシリーズ」にインスパイアされて書きました。特定のキャラクターに対してではなく、あの世界に対するやるせなさを綴ったものです。
今回のミックスではSoundCloud版とは違いサビの前を完全に無音にしたりSEを入れたりしています。こういうハッとするような要素があると聴く側にとって刺激になると思いましたので…。いかがでしたでしょうか?

3.シャフト
リズムギターのフレーズを軸にして進んでいく曲です。このフレーズを思いついた時はもっと速い曲だったんですが、紆余曲折あってミドルテンポでアンニュイな感じになりました。
ブリッジミュートのギターと歌で始まる所とか、オクターブ上のファルセットを重ねる所はGRAPEVINEの「また始まるために」を意識してました。
あと作ってる時は全然頭に無かったんですが、阿部芙蓉美の「エイトビート・サッドソング」に無意識に寄せてたかもしれません。(というか「エイトビート・サッドソング」ってタイトル、この曲のコンセプトまんまですね…笑)
Aメロでボーカルを重ねてサビで一本にする、というセオリーとは逆の事をしていますが、一人のボーカルに焦点が合う感じがして気に入っています。
先述の通り基本的にギターのレ♯→ミ→ファ♯→ソ♯の動きとⅣ→Ⅰのコード進行の繰り返しを軸にしつつ、それ以外の要素で展開を作ってます。頭のコードの増4度とか、ギターのフレーズの短2度とか、不安定な響きを混ぜてダウナーな感じを表現したつもりです。
歌詞は前職を適応障害で辞めた頃の事を書いてます。最後のサビで「嘘 これはきっと」を連呼するのが限界な感じがして気に入ってます。暗くてなんかイヤですね!笑 あとこのブログの影響も少し入ってます。

4.ブーケ
これは白状するまでもなくGRAPEVINEリスペクト枠の曲ですね…笑。
GRAPEVINEの「公園まで」とサニーデイ・サービスの「あじさい」を意識して作った記憶があります。お洒落で軽快な感じを目指してました。
イントロや途中のアルペジオを重ねる部分など、所々ツインギターっぽいアレンジをしてるところが個人的に気に入ってるポイントです。最初は弾き語りで作っていて、ギターも伴奏とメロディでガッツリ分かれてたんですが、とりぷる♣ふぃーりんぐの「ぐーちょきパレード」から着想を得て、イントロは左右で違うカッティングのフレーズを弾く形になりました。
あとサビのコーラスも上行ったり下行ったり追っかけたりで愉快な感じで好きですね。録ってて楽しかったです。
歌詞は「ハナヤマタ」というアニメ/漫画にインスパイアされて書いたものです。と言っても自分の視点とフィクションが入り混じっててなんか掴みにくい感じになってます笑。作中の台詞が元になってるフレーズも多いですね。「花が舞ってる」も「ハナ(キャラクターの名前)が待ってる」と掛かっていたりします。ツインギター的なフレーズも百合のメタファーだったり…するかもしれません。いや本当はそこまで考えてませんでした。でもそういう事にしておきます。ここでこじつけておきます。
2サビの「追いかけてはすれ違う日々に」は個人的に作品のストーリーを言い得てる言葉かなと、おこがましいながらも思ってます。あとリアルな話、人間関係ってこうだよな〜っていう…笑。
「この瞬間がずっと〜♪」は作中の台詞が元ですが、作品に対する僕の気持ちでもあります。名残惜しさを感じさせるようなアウトロにその言葉が乗っかってくるところが気に入ってます。

5.夏の白昼夢
これも「ラヴレス」や「シャフト」に続く2コードシリーズです。冒頭のアルペジオとコード進行を最初に思いついて、そこから広げていった曲です。弾き語りながら作ったんですがメロディがスラスラ出てきたのが気持ち良かったです。
この曲全体の特徴として、ドラムが終始右手でライドを刻み続けている点があります。意図としてはループを生演奏で再現しているようなイメージです。曲が終わる時に、絶えず鳴っていた音が途切れると名残惜しさが出るのではないかと思い、このような手法をとりました。それと、夏をテーマにするのは最初から決まっていて、ライドの音は水の流れや風鈴のイメージでもあります。ギターのモジュレーションも水面の揺らぎみたいなイメージです。
ギターのフレーズでは6thのトーンや4度の音程を使って日本っぽい感じ(東洋的な響きと言えばいいんでしょうか?個人的にはそう感じるんですが何故なのかまだ言語化できてないです、すみません)を出してます。
歌詞は「妄想上の夏を過ごした日の記録」って感じです。オタクが思い描く架空の夏ってあるじゃないですか。あまり意識してませんでしたが、インターネットでよく話題になるサマーコンプレックスとか感傷マゾとかの話に繋がってくるのかなと思います。
そんな理想の夏を夢見る主人公が、架空のヒロインの妄想と共に家を出て、電車で海に行って、帰路で現実に戻っていくっていう、虚しい歌詞になってます。
架空の夏を描く上で、またアニメを参考にさせていただきました。と言ってもラブコメとかではなくきらら系が主なんですが、ハロー!!きんいろモザイク 第10話「海べのやくそく」、ゆゆ式 第3話「夏休みじゃーい!」第12話「ノーイベント グッドライフ」、それでも町は廻っている 七番地「愛のナイトウ避行」などです。特にきんいろモザイクに関しては僕の架空の夏のイメージそのものですね。それとインターネット上のイラストもいくつか参考にしてます。ちなみに「自動販売機の照明が〜」は完全にゆゆ式第3話からです。多くは語りませんが、あれは本当に良いシーンだと思います。

6.第12話
僕の周りではこの曲が特に人気です。Apple Musicでも☆が付いてました。ありがとうございます〜。
もう3年ぐらい前になるんですが、新社会人になる前日に不安を紛らわすために散歩していたところ、メロディと歌詞が1コーラス分浮かんできまして、それをストックしていました。それをしばらくしてからアレンジして音源化、という流れでリリースされた曲ですね。
アレンジではまず、少ない情報量でいかにドラマチックにできるか、というコンセプトがうっすらありましたね。コード進行はⅠ-Ⅴ-Ⅵm-Ⅳの繰り返しで、各セクションの開始点をずらす事で展開を作ってます。例えば、イントロ〜AメロはⅠ-Ⅴ-Ⅵm-Ⅳ、サビ前に2小節の小さい間奏(Ⅰ-Ⅴ)を用意してサビをⅥm-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ、という具合です。これが音楽的にメリットがあるのかと言うと…特にありません笑。コード譜に起こすと綺麗に並ぶ事ぐらいですかね。
ちなみにこの4コードのパターン、Wikipediaに記事があるぐらいスタンダードなものです。皆さんも耳馴染みがあるのではないでしょうか。
ドラムでは大サビで初めてライドを使う事でドラマチックさを出したつもりです。この手法はLUNA SEAの「gravity」という曲に着想を得ています。(ちなみに「シャフト」でも同じ手法を使ってます。)
歌でもサビの「第12話(の悲しみを〜♪)」を大サビで回収していたり、そこにコーラスを重ねたりと、これまたドラマチックになったんじゃないかと思います。
歌詞はアニメの最終回について書いています。ただ、最終回が来る事を嘆いているのではなく、最終回を迎える悲しみも次のクールでは忘れてるよねっていう無常感も入ってる感じです。
ちなみに「その名前を口にできなくて」のくだりは、会社の先輩に好きなアニメを聞かれた時に、いきなり萌えアニメを挙げるのもな〜と思い口ごもってしまった経験から来てます。
2番の「再生ボタンは押せないまま」については、テレビで深夜アニメが写らなくて、ネット配信でアニメ追っていた東北の実家に住んでた時の事ですね。実家を出た今もテレビを持っておらずネットでアニメを見ているので、未だに深夜アニメの実況に対する憧れがあります。
あと「■■■■■を過剰摂取して」の伏字になってる部分は歌詞カードだと読めるようになってます。そもそもなぜ伏字にしたかと言うと、「過剰摂取」「壊れたい」って言葉と並べると誤解されそうで面白そうだな〜って思ったからです。何かヤバいものを摂取してるんじゃないかっていう笑。

7.STA
インタールード的な曲です。
アルバム全体の構想をしている段階で、「STAGE」だけやたらうるさくて熱いので、そこをゴールに持っていくのが良い流れになるのでは、と考えながら曲順を組んでました。その上で、「STAGE」だけ浮かないように繋ぎになる曲が欲しいよねって事で、この曲を入れました。
冒頭の1Kの音は「第12話」からの流れで放送休止をイメージさせる演出をしたくて入れました。
ピアノのフレーズは「STAGE」のギターとベースのフレーズから持ってきてます。ピアノのセルフレコーディングは初めてで、ピアノを演奏する事自体ド素人なので見よう見まねで弾いてたんですが、弾きながらペダル踏んだり離したりするのってめちゃくちゃ難しいんですね…。
列車の音は「STAGE」のインスパイア元の映画の影響です。こういうSEで次の曲に繋ぐの、一度はやってみたかったんですよね。
自分の中では「第12話」は最終回についての歌で、「STAGE」はその先の歌、という位置付けなので、次の駅へ向かう、という意味も込めてます。
タイトルの「STA」は「STAGE」の副産物という意味や、STA(R)、STA(TION)という意味もあったりします。これもインスパイア元の映画の要素です。
あと、ミックスではあえてローファイな感じにしてます。ノイズで雰囲気を作ってるようなイメージです。

8.STAGE
最後の曲ですね。アルバム中では一番激しい曲です。「劇場版 少女⭐︎歌劇 レヴュースタァライト」を観て衝撃を受け、その衝動で一気に作った曲です。こういう、勢いだけで一曲完成させるみたいな事は恐らくこの先無いかもしれません。僕は基本的に無気力な人間なので…笑。曲調は主に当時ハマっていたエモやポストハードコア、ヒップホップやアニメソングなどの影響を包み隠さず出力したような感じです。
歌詞はステージに立つ事や表現する事について、インスパイア元の要素を織り交ぜつつ書いてます。
思い入れのある曲なので、詳しく解説する記事を別で今書いてます。リファレンス編は既に投稿してますので、次は作曲や歌詞について詳しく書いていこうかと思います。書き上がった際はまたそちらも読んでいただければ幸いです。

楽曲解説は以上です。「STAGE」についてはまた後ほど詳しく書きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
よければまたアルバム「STA」を聴いていただければ幸いです。
金欠なのでサブスクの方はいっぱい再生していただけると嬉しいです…笑

以上!